お母様とお店とボクの纏わる話。

「モトザワさんに髪を切ってもらって、誰かに会うと、よく褒められるんですよ。」

そう、お母様の話をしてくれました。
母娘で通ってくださるお客様で、お母様、と言ってもボクからすればお婆ちゃん位の世代のお客様。



足を怪我されてからは、なかなか外出出来ず、うちの店にもタクシーを使ってでもいらして頂いていたのですが、流石にここ1、2年は足の具合も悪く、病院に隣接している所で切ってもらっていると娘さんから伺っていました。







「母がずいぶんお世話になりました。足も悪いからずいぶん迷惑かけたでしょ。」

以前勤めていた店から通ってくださっていて、DECOHAIRがオープンした時も、立地的にも不便だし、いらして頂けるか分かりませんでしたが、変わらず通って下さいました。
タクシーを使って、杖をついて。

「初めて切ってもらった時に、すごくみんなに褒められてね。喜んでました。」

「髪を綺麗にしてもらって、御機嫌だから帰りに沢山買い物してきてね。自分で持てないからタクシーの運転手さんに運んでもらうんですよ(笑)」

「果物屋さんに行って自分の好きなフルーツばっかり買って帰ってきたこともありましたね。あと漬け物のお店もね。近くにあるでしょ。好きだから。」

「よく言ってましたよ。DECOHAIRさん行きたいけど、調子が悪いからなかなか行けないねえ。って。」

ボクの知らない、そのお客様、いえ、お母様の話を髪を切りながら、とりとめもなく、聞かせてもらいました。



前回そのお客様がいらしたちょっと後に、亡くなったということも。



そんなお母様のことを思い出しながら、どれも伺ったことの無いお話ばかりを。
ボクとお店と、お母様の纏わる話を。



「お母様のこと、お話が聞けて良かったです。」

と、そうお伝えしてお見送りをしました。
わたしもそのうちタクシーで来るようなるのかしら(笑)
そんなことを言う背中を見送りながら、お母様は店の前までタクシーを呼んで車が出るまで見送ったなあ...と思い出して。


ああ、そうか。今日は母の日だ。

ありがとうございました。
あなたのお母様には大変お世話になりました。


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